昨日の衆院予算委員会で安倍首相が塩崎恭久厚労相に厚生年金の未加入事業所対策を指示する考えを表明しました。
厚労省の推計によると、約200万人が厚生年金に加入せず国民年金のままになっているとのことです。未加入の疑いのある全事業所の調査を2017年度末までに実施する方針です。
ここで、厚生年金の未加入とはどういうことか?社会保険労務士として解説したいと思います。
厚生年金法第6条1項に厚生年金に必ず加入しなければならない強制適用事業所の規定があります。
大きく要素としては2つです。
①適用業種である事業所で常時5人以上の従業員を使用するもの(個人事業と考えてください)
②法人の事業所で常時従業員を使用するもの(一人であっても)
②については法人を設立し従業員を雇う場合は必ず加入しなければなりません。会社を設立した当初は一人であったり、家族に手伝ってもらってということが多いと思いますが、給与として支給する場合は加入しなければなりません。法人の場合は1月よりマイナンバーが付与されますので、今後確実に加入漏れを指摘される形になりますので注意が必要です。
①についてが恐らく非常にグレーで上記の未加入の大半を占めていると思われます。まず「適用業種」という言葉の意味ですが、「非適用業種」以外の事業所ととらえたほうがわかりやすいです。非適用業種というのは、
・農林、水産、畜産業
・理容、美容、エステ事業
・映画の製作、演劇、その他興業事業
・弁護士、弁理士、会計士、税理士、社労士等の士業
・神社、寺院、教会等の宗教の事業
と規定されています。個人事業をされていて上記の業種であれば従業員が5人以上になっても強制的に加入しなくても済みます。(しかし法人化するとすぐにでも加入する義務が発生します)
次にこの5人のカウントについての解釈です。通常社会保険に加入する従業員はフルタイム勤務者かそれに準じた勤務(フルタイム従業員の3/4以上の勤務をしている→今年法改正がありますので基準が変わります)をしている従業員になりますが、上記の5人のカウントにはアルバイト等の短時間勤務者も含まれます。ですので、よくあるケースとしては、飲食店等の個人事業主で正規社員を3名雇っていて、プラス、短時間のアルバイトを2名雇っている場合、上記の強制適用に該当します。
今まではこのカウントがなかなか把握できなかったところですが、マイナンバー導入に伴い税分野との連携が強化されますので、源泉徴収納付の人数と合わないと指摘が入る可能性が高くなります。
サラリーマンの方は実感は薄いと思いますが、厚生年金に加入すると自身で支払う保険料と同額を会社が負担してくれます。逆に言うと会社の負担が多くなるので事業主の方は大変です。
高齢化社会が進む日本では、相互扶助の枠組みである厚生年金の加入や、国民年金の未加入問題を解決しておかなければならないと思いますが、増々事業主の負担が増えることは日本経済にとってメリットなのか?社会保険労務士として悩ましいところです。
もし厚生年金の加入対象なのに加入しそびれていたという事業主様がいらっしゃいましたら、表参道HRオフィス 山本純次までご相談ください。