「同一労働同一賃金推進法」(正式名称は「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」)が2015年9月16日から施行されました。
これは「同じ価値の仕事には同一の賃金水準を適用すべき」という同一労働同一賃金の原則に基づき、正社員と派遣社員との賃金や待遇の格差を是正するための法律のことです。
また、昨日の国会にて、安倍総理がこの「同一労働同一賃金は重要課題」という考えを示し、実現に向けて前向きに取り組む姿勢を示しました。
そもそも日本では、正社員と契約社員、派遣社員では待遇が違って当たり前という風潮があります。
しかし、例えば派遣社員の制度の趣旨としては、企業が必要とするスキルを持つ人材を派遣し提供してもらうという前提なので、正社員と同じ業務をしていれば同じ待遇になるということが当然のようにも思えます。
では、何故このような待遇差が生じるのでしょうか?
私感にはなってしまいますが、日本人というのは労働時間の使い方がうまくなく、また時間単価という概念をあまり持ってこなかったということが影響しているのではと思います。
これは残業に対する考え方にもつながってくるとも思うのですが、欧米系の企業の考え方だと、一人の労働者の1時間あたりの労働単価、生産性を常に意識します。
具体的な数字で見ていくと、
例えば、月給32万円の人で月の所定労働時間が160時間(1日8時間×20日)の場合、1時間あたりの時間単価は2,000円になります。ですから1時間あたり2,000円、1日当たり16,000円の売り上げに貢献できないと企業は赤字になります。更に1日3時間残業したとなると、残業1時間あたり2500円、合計で1日23,500円の売り上げに貢献しないとなりません。この数字を自身で意識しながら仕事されているサラリーマンの方がどれだけいるでしょうか?
特に、管理職や親会社から出向してきてポストを用意された方などは、本当にその待遇に相応しい価値を発揮しているか大いなる疑問を持つ人も多いと思います。
正社員、派遣社員の待遇の格差を論じる前に、社内での時間単価での貢献度を一度透明化してみるのも良いかもしれません。
バックオフィスなどの直接利益を生みださない職種は難しいかもしれませんが、時間単価と各月の労働の成果を一人ひとり測定してみる(数値に落とすのは難しいですが)と、不効率で待遇に相応しくない業務をしている人をあぶり出せるのではと思います。
営業職などは明確に数値が分かり易いので、時間単価と成果との比較を常に行うことにより、残業をしたうえで成果を出した人や労働時間が短いのに効率的に成果を挙げているという人がわかりやすくなると思います。
日本の労働環境では新卒採用で一括採用した総合職の正社員が非常に恵まれた環境を手に入れることができます。ただ、その社員が本当に成果を挙げているか、この環境に甘んじていないかということは、これからの激変する時代において、再度各企業がしっかりとモニターするべき事項だと思います。
このような取り組みをしたうえで、冒頭の「同一労働同一賃金」を議論すれば、更に明確な問題点を見いだせるのではと思います。どのような業務を行った人に、どの単価の給与を払っているか、それが明確になれば同じ業務をする派遣社員にも同じ単価の待遇を提供するという当然の考えになってくるのではと思います。
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